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取引先が破綻してしまった場合、債権の回収は非常に困難です。特に、不動産担保を有していない企業にとっては、その後の破産手続等において配当金を受領できるだけで、債権のうちの大半は回収不能として諦めるしかないケースも多いかと思います。しかしながら、「諦めるのは早い」ケースもあります。
以下、不動産担保を有していないことを前提として、考えられる回収方法を記載します。 |
①担保権を実行する(所有権留保、先取特権)
破産手続開始決定があっても、債権者の担保権は制限されることなく行使することができるのが原則です。債権者の担保権は別除権と呼ばれます。
まず考えられるのが所有権留保です。所有権留保で商品を取引先に売買し、取引先が倒産した場合、売買契約を解除し、取引先の了解をとった上で商品を引き上げます。ただし、これは、取引基本契約等の書面において、代金が支払われるまで所有権が売主に留保される旨を明確に定めておく必要があります。
また、いざ実施の段階においても、取引先の了解をとらないと、窃盗、建造物侵入罪などに問われるおそれがあるため、書面で了解をとります。了解をとる場合、代表者か取引先の弁護士とすべきです。
ただし、取引先との売買契約の中で第三者に転売されたときは所有権留保が解除されると定められている場合がありますし、そのような規定がなくても既に転売され第三者が商品の所有権を即時取得しているケースも考えられますのでその場合は所有権留保の方法によることは難しくなります。
次に、動産売買の先取特権(民法第311条6号)によることが考えられます。これは、動産を売却して、目的物がまだ取引先に残っている場合、売却した目的物上に認められる先取特権です。競売等により債権回収を実行することになります。この場合、第三者に転売されたケースでも、取引先の転売先に対する代金債権の差し押さえで事実上優先弁済を受けることが可能なケースもあります。ただし、ケースバイケースですので、弁護士に相談する必要があります。
いずれにしろ、取引先破綻の報に接した場合は、速やかに弁護士に相談する必要があるといえます。
②債権譲渡
取引先は、それまで何らかの事業を行ってきた以上、第三者に対して金銭債権を持っていることも十分に考えられます。例えば、取引先が別の会社に対して売掛金を持っている場合です。その場合、取引先からその債権の譲渡を受け、あなたが譲り受けた債権を第三者に対して行使することにより、債権の回収を図ることができます。
債権譲渡は原則として自由にできますが、債権譲渡を第三者に対抗するには、確定日付ある証書により、取引先から第三債務者に対して譲渡の事実を通知させる必要があります。内容証明ならば確定日付がありますので、内容証明を用いて、取引先に譲渡の通知をさせましょう。 ③相殺により、回収する
相殺とは、当事者間で対立する債権を相互に保有し合っているような場合、両債権を同じ金額分だけ共に消滅させることができるという制度です。取引先が破綻してしまった場合でも、取引先に対して債権と債務の両方が存する場合には、両者を相殺することにより、取引先に対する債権を回収したのと同様の効果を得ることができます。取引先から、取引保証金を差し入れてもらっている場合には、その保証金の返還請求権と相殺する形で回収が図られるケースがあります。
もっとも、相殺の意思表示を、誰に対して、どのように行うべきか、頭を悩まされるところと思います。弁護士を利用すれば、破産手続等の法的整理手続に応じて意思表示の相手方を選択し、内容証明郵便を利用する等、より確実な方法で、相殺の意思表示を行うことができます。
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